足立美術館 |
足立美術館は、島根県安来出身の実業家 足立全康(明治32年~平成2年)が、昭和45年(1970)横山大観作品などの、蒐集していた美術品を展示するために開館しました。
庭園は当初、大阪芸術大学の中根金作教授が設計しました。しかし、「庭園もまた一幅の絵画である」と公言していた足立全康は、自ら考えで庭を随時変更していったので、足立全康作といっても過言ではない庭園となりました。毛利氏が陣を張ったという勝山や月山を借景とし、「枯山水庭園」「白砂青松庭」「苔庭」「池庭」「歓迎の庭」「寿立庵の庭」の6つからなり、主庭の枯山水庭園は、山に見立てた立石から注ぐ水が大河となり流れる様を表現しています。また、横山大観作「那智の滝」をイメージして、遠くに見える亀鶴山に人工の滝「亀鶴の滝」を造ったり、床の間の壁を皆の反対を押し切って破壊し、庭があたかも掛け軸の中にあるように見せる「生の掛軸」を造るなど、足立美術館は足立全康独自の意匠でできています。
足立美術館の名を一躍有名にしたのは、米国の日本庭園専門誌「ジャーナル・オブ・ジャパニーズ・ガーデニング」が主催する日本庭園ランキングでNo.1になったことです。(現在は「しおさいプロジェクト」と呼ばれています)しかも、2013年現在11年連続で日本一になっているのは、完璧とも思える日頃の管理の賜物だと思います。約165000㎡
しおさいプロジェクトで11年連続で庭園日本一になった足立美術館に行ってきました。やはり評判が高い庭園なので、前々からずっと訪れてみたいと思っていました。駐車場に着いた時から、気持ちはかなり昂っていましたね。
美術館に入ると、まずガラス越しに、苔庭と枯山水庭園が見えてきます。今までに見たことのない、感じたことのない、広大な枯山水庭園の迫力、絵画のような美しさに、ただ脱力して見ているだけで、時間が止まっているような錯覚さえも感じられます。本当に背後の山まで一体となり、ここを訪れて真の借景とはこのことだなと思わされます。ただ、この美術館は庭園維持のため、庭に入ることができず、ガラス越しからしか観賞することができないのは残念です。庭園内はチリ一つ落ちてなく、聞くところによると、造園職だけでなく、美術館のスタッフ全員が毎朝清掃しているとのことでした。この庭にかける執念は、多分、足立全康の意思をスタッフが引き継いでいるのでしょう。
足立全康は、貧しい家庭から、商売で身を立てた人物です。これだけの美術館を一代で築いた人物なので興味があり、自叙伝の「庭園日本一 足立美術館をつくった男」を読んでみました。すると、横山大観と女性を好み、商売に没頭し財を築くも、大きな失敗もある、かなりユニークな、破天荒な人でした。やはりこのような突き抜けた人物でないと、突き抜けた美術館は出来ないのだなと感心させられました。
美術館の中央には喫茶室「翆」があり、ここは美術館メインの庭である枯山水庭園を見る特等席です。1杯1000円のだいぶ高いコーヒーですが、庭園維持管理費を払っていると思えば、たいしたことはありません。そして、窓に見える庭園を額絵、掛軸に見立てた、「生の額絵」「生の掛軸」など趣向を凝らした展示や、桂離宮の茶室の面影を写した「寿立庵」の茶庭など多くの見どことがあり、ここはいつまでいても飽きることがありません。
また、庭園だけでなく、日本一と言われる横山大観コレクションや北大路魯山人の陶器など充実した美術品も驚嘆させられます。1日では全てを観賞することはできないので、遠方ですが、是非何度も訪れてみたい美術館であり庭園です。