樹木の構造 |
樹木は幹内部の木部と師部の間にある形成層が細胞分裂し、幹が肥大生長を行っています。
春は生育が旺盛で、径が大きく壁が薄い細胞ができるため年輪は淡色(早材)に見えます。夏から秋にかけては径が小さくな壁の厚い細胞ができるため年輪は濃色(晩材)に見えます。この濃淡の1組が同心円状に年々追加され年輪となります。
分裂したばかりの新しい細胞の壁は薄く、細胞壁をつくっている繊維と繊維の隙間は水や水に解けたものが自由に通り抜けられますが、やがてリグニンで埋められてしまうのでこの細胞は死んでしまいます。形成層で作られた大部分の細胞の寿命は数か月といわれています。
根、幹、枝、葉を貫く通導組織である維管束は、根から吸収した水分や、窒素、リン酸、カリウムなどの無機塩類を葉へ送り、葉でつくられた養分を根に送っています。
根は土中の水分、無機塩類の吸収と、樹木を支える2つの役目があり、幹が傾むきバランスが崩れると、樹木を支える方向に伸びていく性質があります。
木部は広葉樹では導管、木部繊維、柔細胞などから、針葉樹は仮導管、柔細胞などから構成されています。木部では辺材部の柔細胞など一部の細胞を除き、ほとんど死滅し、細胞壁だけ残った状態になっています。
木部細胞の細胞壁はセルロース、ヘミセルロース、リグニンから構成されています。細胞壁中のセルロース、ヘミセルロース、リグニンの割合はおおよそ広葉樹では40~50%、25~40%、20~25%、針葉樹では40~50%、25~30%、25~35%程度になっています。
セルロースはグルコース(ブドウ糖)が直鎖状に結合した高分子の多糖類、ヘミセルロースはキシロース、マンノース、アラビノースなどグルコース以外の糖が結合した高分子の多糖類です。リグニンは複雑な構造を持つ芳香族の高分子化合物で、細胞壁中でセルロース、ヘミセルロースと絡み合って三次元網目構造を形成しています。
セルロース類は鉄筋、リグニンは鉄筋を補強するコンクリートに相当する役割を持っていると思って良いでしょう。
葉は樹木が生きるためのエネルギーをつくる器官です。
外から取り込んだ無機物から、植物体に必要な有機物を合成できる「同化」を行います。この同化にはブドウ糖などから炭水化物を合成する炭酸同化と、タンパク質やDNAなどの窒素化合物をつくる窒素同化があります。また、気孔から水分を蒸発させて体温調節する働きもあります。
植物は光合成の働きによって、無機物(水と二酸化炭素と光エネルギー)から、有機物を合成します。有機物とは炭素を含む化合物のことですが、一酸化炭素、二酸化炭素などの単純な炭素化合物は無機物となります。また、水や金属など炭素以外の元素で構成される化合物も無機質になります。
余談ですが、生物の体内で作りだされる物質は全て有機物であり、草食動物は、植物を食べ、肉食動物は草食動物を食べることから、生物を構成する有機物は、大気中に存在した二酸化炭素となります。