1級造園技能士への道

1級造園技能士への道

1級造園技能士 実技・要素試験対策

1級造園技能士が受かるためには、①実技試験 ②要素試験 ③学科試験の全てに合格しなくてはいけません。 まずは、①実地試験 ②要素試験が8月に開催されるので、この対策を行うことにしました。


①実技試験対策


1級造園技能士
課題平面図 jwcadで描いてみました。

 

・時間配分を決める

講習会では荒天の影響もありましたが、3時間という制限時間内には完成させることはできませんでした。本番の日の地盤コンディションはわかりませんが、資格試験なので、コンディションが悪くても制限内に完成させなくてはアウトだと思います。そこで、各工程毎の施工時間を決め、出来栄えに完璧を求めず、多少悪くてもまずは時間内に完成させようと思いました。

そして、各工程の予定時間を以下のように考えてみました。
 1.竹垣
    柱の立て込み   15分
    胴縁の取付け   15分
    立子のかきつけ  15分
    押し縁、玉縁   15分
 2.つくばいの敷設   30分
 3.飛び石、延段     45分
 4.景石、植栽     30分
 5.仕上げ        15分

「仕上げ」は前工程が遅れてもいいように、余裕を持って多めに取っています。
 

・使える道具を揃える、加工する

使用工具は決まっていますが、工具でも種類があります。実際の試験で威力を発揮する、「使える道具」を揃えましょう。具体的には、以下の通りです。

1.くぎ抜き

バールのことですが、大小2つ用意しましょう。小バールは、竹垣でくぎしめに失敗したときや、小さな石を据え付けるときに、大きなバールはつくばい等の大きな石の据え付け、移動に使います。

2.きり

充電ドリルも用意しましょう。大幅な時間短縮できます。

3.こうがい板

飛び石、延段の「ちり」が50mmなので、こうがい板の先端をカットして、50mmの寸法に合わせれば、整地するときにいちいち巻尺で測りながらする必要がなくなります。ただし、この技は試験官も熟知しているので、試験前に注意され直させられることもあります。そこで僕は、こうがい板の下端から50mmのところに印をつけて目印にしました。

4.目地べら

延段の目地入れで使います。かなり石の間隔が狭いので目地べらは重宝すると思います。僕は色々探したのですが見つからず、本番では目地ごてで作業しましたけど。

5.水糸

普通のリールに巻かれている水糸と、糸巻きを使いました。丸太の立て込みでは、簡単に柱に留められる糸巻きを、飛び石等の据え付け高さをとる時は、水糸のリールを使いました。

6.スコップ

剣スコと両面スコップを用意しました。両面スコップは丸太を立て込む時に、無駄な掘削をせず掘れるので重宝します。

7.ピンポール

水糸を張る時に使います。ピンポールにノコで切れ目を入れておくと、水糸がずれません。

 

・練習

環境に恵まれている人は、道具、材料、練習場所があり、試験前に十分、練習ができますが、そんな人ばかりではないでしょう。僕は練習場所、道具はありましたが、材料がありませんでした。
つくばい、飛び石、延段は無いので、結局、講習で2回練習したのみで本番を迎えることになりました。このため、銀閣寺垣を早く作ることで、他をカバーするしかないので、半割の竹を購入し、銀閣寺垣の練習を十分しました。


・イメージトレーニング

練習時間、材料が不足しているので、自宅でできることはないかと思い、参考書を探しました。そして手に入れたのが、以下の資料です。
・造園実技の基本  小沢重徳 著  理工図書
・造園技能検定実技課題ビデオ (社)日本造園組合連合会
特にビデオは擦り切れるくらい見ました。結束方法は役に立つと思います。

②要素試験対策

要素試験は試験問題として事前に公表されている樹種名一覧 第1表46樹種から5種、第2表115樹種から15種 出題されます。 講習会での模擬試験は6点しかとれずビリでしたので、これは普通にしていては受かりません。かといって試験まで1ヶ月弱なので、公園めぐりをして特徴を覚える時間もありません。そこで対策を考えました。

 

・土地に無い樹木は出題されない

神奈川県で受験するので、ここで一般的に植栽されていない樹木は、試験問題の樹種名一覧に載っていても出題されないと思い、一覧から消しました。たとえば、デイゴは沖縄ではそこらに植わっていますが、関東ではあまり無いでしょう。トドマツは北海道の樹木なので、これも出題されることはまず無いでしょう。 こうして、樹種名一覧の第1表からトドマツなど9種、第2表からデイゴなど10種を消しました。

 

・机上での覚え方

まずは手持ちの図鑑を見ましたが、葉と枝について詳細に写真や解説が掲載されているわけではありません。 (今では、葉に特化して詳細に解説している図鑑もありますが) そこで、本屋に行き何か資料はないかと探してみました。そして一冊の本が目に入りました。
  「樹木見分けのポイント図鑑」 講談社
この本は、似ている樹木の違いを図入りで記載しています。ここには、葉についてもかなり詳細に解説していました。
 「うーん これはいいな!!」
さっそく購入しました。
実際に僕の勉強の仕方は、
・自信がある樹木は勉強の対象外とした。
・「樹木見分けのポイント図鑑」で葉の特徴を覚えた。
・「樹木見分けのポイント図鑑」に掲載されていない樹木については、普通の図鑑でまず葉が対生か互生かを暗記し、その他、葉について特徴(毛がある等)が記載されていればこれも覚えた。

  こうして、仕事が終わってまだ明るいうちは、実技試験の練習、家に帰ってからは、ビデオを見たり要素試験の勉強をして、試験当日を迎えました。


1級造園技能士 実技・要素試験

①実技試験

8月、盛夏の頃 ついに1級造園技能士 実地・要素試験の日が訪れました。この日は、講習の日とはうって変わって晴天です。熱中症対策として2リットルのウーロン茶ペットボトルを購入し、会場に向かいました。まず、受付を済ませ、自分の試験場所を確認し、道具を運びます。そして、支給された材料の過不足等を確認しました。材料が足りないことは命取りですので、十分確認しましょう。

そして、試験管から以下の注意事項、伝達事項がありました。
・今日は暑いのでヘルメットは被らなくてよい。
・こうがい板を、チリの高さ5cmが判るように加工しているものは、使用できない。

僕はこうがい板の先を5cmにカットしていたので、しょうがなく、先を切り戻しました。ただ、5cmの位置に印を付けておきましたが。

こうがい板

(1)竹垣  目標時間60分  実作業時間70分

・柱の立て込み 目標時間15分  実作業時間 15分

まずは柱の立て込みです。
柱の先端に、マジックで線が2本書かれていますので、この間にノコをいれて切り落とします。そして図面から親柱の位置を出して、親柱を立て込みます。ここで、辺りから「コンコン、コンコン」と金づちでたたく音が聞こえてきました。 ???

何故だ! と思い辺りを見渡すと皆、柱の末口の縁を金づちで叩いています。そうか、柱は切り落としただけでなく、末口を面取りしなくてはいけないんだ。立て込む前に気がついて良かった。このように、周囲に注意して、他の人がどのように作業しているのか観察すると、失敗を最小限に抑えることができると思います。

親柱を立て、次に間柱を立て込みます。間柱の位置は、左から1650mmとしか決まっていません。このため、胴縁の寸法だけ親柱より奥にセットバックして立て込みます。間柱の位置出しを行い、両面スコップで掘ってみると・・・ なんか地盤が硬いな・・
受験者は多くいるので、この時期連日行われます。このため、柱を立て込む場所は、既に何回か掘られているため地盤は軟らかいはずです。おかしいと思い、図面を見直すと、左から1650mmの位置に間柱を立て込まなくてはならないのに、1500mmの場所に位置出ししていました。 気付いてよかったーーー

このまま作業し、胴縁をこの寸法で切断していたら即アウトだったーー  正しい位置をだして、間柱を立て込みました。また、間柱の高さは図面に記載されていませんが、胴縁、玉縁との取り合わせから考えると、GLより860~880が適当です。 ここでアドバイスですが、僕は親柱、間柱の柱周囲が凹むまで思いっきり突き込みました。これは、後工程で必ず土が余るので、ここに少しでも処理できるようなスペースを設ける為です。

・胴縁の取付け  目標時間15分  実作業時間 20分

次に胴縁の取付けです。取付は上段の胴縁から取り付けると、柱の天端が開きません。この工程は、特に難しいことはありませんが、仕様に書かれているように、上段は元節止め、そして、中段は逆に末節止め、下段胴縁は元節止めと交互に取り付けました。



・立子のかきつけ 目標時間15分  実作業時間20分

仕様書に書かれているように、左からかきつけ、始まりの3枚は末を上にして取り付けました。シュロ縄は、からげの始めは裏側でいぼ結び。終わりはうのくび結びとします。立子が曲がっている場合は、「ねむり」「ぶっさき」で直せますが、時間がもったいないので、立子の順番を上手く組み合わせて対応します。立子が緩くならないよう、かきつけはしっかり1本1本締めるのがコツです。


・押し縁、玉縁   目標時間15分  実作業時間15分

押し縁は胴縁とは逆に上段は末節止め、中段は元節止め、下段は末節止めとします。玉縁は仕様に記載されているとおり、元節止めとします。竹は末口から通りのよいところを狙って割っていきました。そして、太く、まっすぐな割竹を玉縁とします。手を切らないよう、必ず手袋をして竹を割ります。シュロ縄の結束位置に指定はありません。このため、図面から読み取り、左側の立子から3枚目、10枚目、17枚目、25枚目、33枚目位に結束しました。立子の太さが違いますので、バランスを見て、多少移動して下さい。

押し縁の結束は、シュロ縄2本使いの「ねじれいぼ結び」とし、しりをいぼの上端から40mmに切りそろえます。玉縁の結束は、シュロ縄3本使いの「とっくり結び・ねじれいぼ返し入り」とし、頭の出が玉縁の上端から70mm、下がりが玉縁の上端から150mmとします。

シュロ縄の結束は、練習するしか上達しません。家でもできるので、時間があったらやりましょう。 本番での時間短縮、シュロ縄節約につながります。


(2)つくばいの敷設  目標時間30分  実作業時間35分

まずは、水ばちと延段にある飛び石の位置を決めます。水ばちは図面に記載されている位置で、延段にある飛び石は、図面を見ながらだいたいの位置にします。水ばちはかなり重いでの、作業区画内に転がして入れる際、四方にはられた区画割りの水糸を切らないように注意します。これを切ると直すのに面倒ですからね。

前石の位置は図面に記載されていません。資料等を参考にして、水ばちの中心から500~700mm離した場所に設置しました。

手しょく石、湯おけ石、つなぎ石は図面の通り、なじみよく据え付けます。天端が広く低い石を湯おけ石、天端が狭く、高い石を手しょく石にします。

海の底は、前石の天端より200~300mm下げ、砂を万遍なく撒き、ごろた石で水門を作ります。
水ばちは若干前傾でも良いですが、他の役石、前石は水平器を使って必ず水平をとるようにします。

最後に、低木と、持参したかけひを据え付けます。かけひは、樋の先端が、水ばちの水穴中心にくるようにして、樋は必ず一節以上ある竹を使います。かけひは失敗しました。時間短縮のため、試験直前にかけひの支柱を短く切って、根入れ寸法を少なくしようと思いました。しかし、短すぎてかけひがまっすぐ立ちません。完成写真で見てわかりますが、若干前傾してしまいました。

石が重いので、かなり疲れます。このため、受験者の体力を試されているように思えます。

つくばい

(3)飛び石、延段  目標時間 45分  実作業時間45分

まず位置決めをします。
ピンポールを8本用意して、延段の四隅の位置、ちりの高さ50mmを水糸でだします。つくばいが正面にくるよう、また前石となじみよくなるよう、延段の飛び石を据え付けます。そして、板石、切石を据え付け、残りをごろた石で埋めていきます。ごろた石は、直線がある石を角石とし、先に決めて据え付け、残りを忌目地(八つ巻、四つ目、通し目地等)に留意して据え付けます。据え付けたら、土を入れ、目地ゴテ等で押さえ、ハケで仕上げます。最後に、延段になじみよくなるよう、飛び石を据え付け、関守石を飛び石の上に置きます。

つくばいと違い、細かい作業が求められます。時間も掛かります。ここでのポイントは、無駄なことをしないことです。 作業をしていると、どうしても延段の位置決め用の水糸に触れてしまいます。このため、ピンポールの根入れが浅いと倒れてしまうので、ピンポールは長めのものを用意した方が良いですね。また、前にも述べましたが、ピンポールは適切な位置に、傷を付けておくと便利です。水糸が引っかかり、ズレ防止になります。このようにして、一度決めた水糸を動かさないようにすることが大切です。
そして落ち着いて作業することです。あせっても早くできません。水分をとりながら、ここはじっくり作業しましょう。


  

(4)景石、植栽    目標時間30分   実作業時間25分

ここは、与えられた高木、低木、下草、景石を使って、自由に作庭できる工程です。ある意味、技能士としての力量、作庭家としてのセンスを問われると思います。使用する材料は既に決まっているので、あらかじめ考えて臨みましょう。

まず、つくばい、延段で余った土を使って築山を作ります。そして、景石、植栽をしていきます。景石は、根入れが出ないよう、石が安定した形で、かつ不等辺三角形で設置するのが良いかと思います。植栽は、木の向きに注意して、石との調和を合わせて植付けます。


 

(5)仕上げ       目標時間15分   実作業時間5分

時間が無くなりました。あと5分!!!
3時間を超えて、丁寧に整地するか、それともある程度やって3時間で完了とするか・・・
3時間以上しても減点されるので、ここは、5分で仕上げをすることにしました。

竹垣、つくばい、延段、飛び石の高さをもう一度確認し、こうがい板で均していきます。「だま」は足でつぶして、近くに植栽があれば、根元に入れました。

こうして3時間の合図とともに、近くの試験管に完了の報告を行い、試験管に完了シールを竹垣に貼ってもらいました。
うーん 疲れた。問題はあったけどもうこれ以上できない。

始めて3時間で完成できたので、しばし達成感に浸りました。



②要素試験

実技試験完了後、休憩を挟み要素試験が始まりました。試験時間は10分、1樹種当り30秒で20樹種出題されます。

試験は屋内で行われます。順番に並んで、合図とともに樹木の前に立ち、回答用紙に樹木の番号を記入します。再度、合図があると次の樹木の前に移動し解答していきます。先月の講習会では6点しかとれずビリでした。仮に実技試験が合格でも、要素試験がダメならばまったく意味がありません。この1ヶ月弱の努力の成果が試される時がきました。

実技試験直後ということもあり、ほどよい達成感でまったく緊張せず要素試験に入っていけました。正直、講習会の時よりも一般的な樹種が出題され、あまり難しいとは感じませんでした。もちろん、勉強して覚えた樹種も出題されましたので、終了後、充実感、達成感がありました。
あとは試験結果を待つばかりです。(クリックすると拡大します)

試験完了後

試験完了後

試験完了後


1級造園技能士 学科試験

実技・要素試験後、ほどなくして合格通知が来ました。 よっしゃーーー
学科試験対策として、(社)日本造園組合連合会 発行の「技能検定問題集精選500題」を購入し、勉強しました。正直、学科はそれほど難しくなく、この問題集さえ勉強すれば、十分合格できると思います。ちなみに、学科の勉強方法は資格のページを参考にしてみて下さい。
9月頃、学科試験が行われ、手ごたえはかなりあったと思います。


1級造園技能士合格

10月位にきました 合格証
なにはともあれ、よかった!!!

合格証書
技能士バッチ



前へ

造園メニュー

岡山 太陽のそばの果樹園
〒716-1131
岡山県加賀郡吉備中央町上竹688-2

園主写真



ブドウのご注文

印刷できる樹木図鑑

フェイスブックへ